リフォームの基礎知識と費用の相場

団地はリフォームできる?工事別の費用相場とメリット・注意点

リフォーム(リノベーション)する前提で物件を購入する場合、マンションや一戸建て以外に団地という選択肢もあります。団地は建物が密集している分、リフォームに制限があるイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。そこで本記事では、団地のリフォームの可否やメリット・注意点、工事内容ごとの費用相場を解説します。団地のリフォームを失敗しないためのポイントもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

団地はリフォームできる?

団地は共同住宅であり、多くの住人が暮らしているため、そもそもリフォームできるのか疑問に思う人も多いでしょう。ここでは、団地のリフォームの可否についてお伝えします。

そもそも団地とは?

団地とは、同一敷地内に複数の共同住宅が建てられた建物群のことです。公営住宅やUR賃貸住宅(旧公団住宅)、公社賃貸住宅など、さまざまな呼び名があります。法律上はマンションと明確な違いはないものの、団地のほうが間取りはシンプルで、建物が密集している傾向にあります。公園や遊歩道、駐車場などの共有スペースが整備されていることが多く、家族でも生活しやすいのが魅力です。

また、団地は高度経済成長期(昭和30年~昭和50年代)に多く建設されました。柱や梁ではなく、耐力壁で建物を支えている、壁式構造を採用した団地が一般的です。

団地によってはリフォームが可能

団地のリフォームが可能かどうかわからない場合は、管理規約を確認すると良いでしょう。管理規約には、一般的にリフォームに関するルールが記載されています。物件にもよるものの、管理責任者に問い合わせて、許諾をもらえばリフォームできるケースが多いです。また、近年では賃貸でも、若い世代の取り込みや空き家対策のため、原状回復義務を免除している団地もあります。そのため、団地に住んでいる場合もリフォームによって自分好みの住まいを実現しやすくなっています。

団地をリフォームして住むメリット

物件を購入してリフォームする場合、団地以外にも中古マンションや一戸建てなどさまざまな選択肢があります。ここでは、団地ならではのメリットをご紹介します。

住環境が良い

団地は、広々とした敷地内に専用の公園があり、緑も多く子育てしやすい環境が整っているのが特徴です。幼稚園・学校などの教育施設、スーパーマーケット、映画館などの商業施設がある団地も多く、家族でのお出かけにも便利です。団地内でイベントやコミュニティがあるため、交流関係が広がって子育てのアドバイスをもらいやすいでしょう。

また、多くの団地は物件が南向きに配置されているため、日当たりが良く快適な生活を送りやすいのもメリットです。加えて、電車・バスなどの公共交通機関が充実していることが多く、子供だけでなく高齢者も安心して暮らすことができます。

家賃や物件価格が比較的リーズナブル

団地は築10年以上経過した建物が多く、同条件の新築物件と比較して家賃や物件価格が安価に設定されています。そのため、予算に余裕がない人や、リフォームでお部屋の雰囲気を大きく変えたいと考えている人にもおすすめです。物件の購入費用を抑えることができれば、家具やインテリアにコストをかけることもでき、理想の住まいを実現しやすくなるでしょう。

基本構造の心配が少ない

団地は、建物自体は古いものの、基本構造や躯体の心配が少ないのもメリットです。リフォームによって既存の建具や設備を交換することで、使い勝手の良い快適な住まいを実現できます。

団地でリフォームする際の注意点

団地リフォームは多くのメリットがある一方、気を付けるべきポイントやデメリットもいくつかあります。続いては、団地でリフォームを実施する際の注意点を解説します。

工事内容が制限されやすい

団地のリフォームは工事内容が制限されやすいため、こだわりのプランがある場合は可能かどうかを物件の購入前にチェックしておきましょう。例えば、団地の物件は壁式構造で建築されており、壊せない壁があることが多いため、大規模な間取り変更が難しい傾向にあります。フルリフォームで居室の間仕切りをすべて撤去し、開放的なワンルームにしたいといった希望は叶えられない可能性があります。配管の位置によっては、浴室やキッチンなど水回りの設備も移動できないことがあります。

また、団地やマンションなどの集合住宅では、バルコニーや玄関ドアの外側などの共用部分はリフォームできません。リフォームできるのは基本的に専有部分のみとなります。さらに、団地ではリフォームできる範囲が限定されていることがあるため、事前に管理規約を確認し、不明点があれば管理組合に問い合わせましょう。そのほかには、古い団地では電気やガスの容量に限りがあるため、IHクッキングヒーターや床暖房などの最新設備の導入が難しい場合があります。

設備の老朽化が進んでいることがある

団地は建築から年数が経過しているため、水回りや電気設備などの老朽化が進んでいることがあります。特に配管や配線の劣化は、見た目ではわかりにくいものの、将来的なトラブルの原因となる可能性が考えられるでしょう。リフォーム時には、これらの設備を交換することで、より安全で快適な住環境を確保できます。

想定外の工事が必要になることがある

古い団地のリフォームでは、想定外の工事が必要になるケースがあります。隠れた配管や配線の問題、断熱材の追加など、見積もり時には発見できなかった問題が発覚する場合があるためです。団地をリフォームする際は、追加費用の発生に備えて余裕のある資金計画を立てることが大切です。

エレベーターがない団地がある

現行の建築基準法が施行される前に建築された団地の場合、5階以上の建物でもエレベーターがない場合があります。特に、高齢者や小さな子供がいる家庭にとっては階段の上り下りが大きな負担となるため、物件を選ぶ前に確認しましょう。

住民の交流が煩わしいことがある

住民との交流は生活を豊かにする面がある一方、人によっては煩わしいと感じることもあります。団地によって住民同士の交流が活発かどうかは変わってくるため、内見のタイミングなどにチェックすると良いでしょう。

団地のリフォームにかかる費用の相場

団地リフォームの費用は工事内容や使用する材料によって変わります。ここでは、一般的な総額の相場から、具体的な工事ごとの費用の目安を解説します。

一般的にかかるリフォーム費用の総額の相場

団地のリフォームにかかるリフォーム費用は、200万~1000万円ほどが相場です。部分的なリフォームかフルリフォームかによって費用は大きく変わります。また、物件の間取りや広さ、建材のグレードなどでも変動するため、事前の見積もりではできる限り詳細な記載を求めましょう。

工事別の費用相場と工期の目安

工事内容費用相場工期の目安
内窓の設置3万~15万円1日
天井・床に断熱材を施工4~8000円/㎡1〜4日
壁紙の張り替え750~1500円/㎡1〜2日
フローリング・畳の張り替えフローリング:2~6万円/畳
畳:0.4~3.5万円/畳
1日〜3日
キッチンのリフォーム40万〜250万円2日〜1カ月
浴室のリフォーム65万〜150万円2日〜1週間
洗面所のリフォーム10万〜60万円1〜4日
トイレのリフォーム10万〜55万円1〜2日
※費用相場はあくまで参考価格です。実際の費用はリフォーム時に必ず施工店へご確認ください。

内窓の設置

断熱性や防音性に劣ることの多い団地では、内窓の設置リフォームが人気です。断熱性や防音性を向上できるだけではなく、防犯にも役立ちます。引き違い窓、開き窓、FIX窓などの種類があり、デザイン性に優れた窓も多いのが特徴です。

設置費用は1枚あたり約3万〜15万円ですが、窓の大きさによって相場は異なります。浴室や洗面所に使う小窓であれば比較的安価に設置でき、中窓(腰高窓)や大窓(掃き出し窓)になると価格は高くなります。加えて、内窓に使用するガラスの種類や窓枠のグレードによっても費用相場は異なるため、事前に設置場所やどのタイプの窓が必要なのかを検討しておくと良いでしょう。

天井・床に断熱材を施工

古い団地は天井や床に断熱材が入っていないことも多いため、断熱リフォームを行うことで快適な空間になります。また、防音効果のある断熱材を使えば、小さな子供のいる家庭でも安心です。費用相場は4~8000円/㎡となっています。

壁紙の張り替え

お部屋をおしゃれに彩るには、壁紙を新しいものへ張り替えるのもおすすめです。狭い範囲であればDIYでも可能ですが、仕上がりの良さを考慮すると、リノベーションの際に業者に頼むほうが良いでしょう。費用の目安は750~1500円/㎡となっており、表面強化クロスや消臭クロスなど、機能性の高い壁紙を選ぶと価格が高くなる場合もあります。

フローリング・畳の張り替え

壁紙と合わせてフローリングや和室の畳の張り替えも行うと、お部屋の印象が大きく変わります。床材は、管理規約で防音等級や遮音等級に関するルールが設けられていることが多いため、リフォーム前に必ず確認しましょう。張り替えにかかる費用は、フローリングが1畳あたり2~6万円、畳の場合は0.4~3.5万円が目安です。

キッチンのリフォーム

団地の場合、キッチンの設備も古いケースが多いため、リフォームで最新のシステムキッチンへ交換する人が多くいます。配管の位置によっては場所を大きく変えることはできませんが、壁付けタイプを対面キッチンなどへ変更することも可能です。費用相場は40万〜250万円と、選ぶ設備に応じて変動しやすい傾向があります。

浴室のリフォーム

団地では、在来浴室やバランス釜といった古いタイプの浴室が使われていることもあり、リフォームでユニットバスへ交換するのがおすすめです。ただし、中には標準規格のユニットバスが設置できないケースもあるため、リフォーム会社に相談すると良いでしょう。費用は65万〜150万円ほどかかります。

洗面所のリフォーム

浴室をリフォームする場合は洗面所も新しくするのが人気です。家族でも使いやすいようにサイズの大きい洗面台を設置したり、高齢者が安心して使えるように洗面所と浴室の段差をなくしたりなど、さまざまな方法があります。ライフスタイルや家族の希望に合わせて適切なリフォームを検討しましょう。費用相場は10万〜60万円ほどとなっています。

トイレのリフォーム

トイレをリフォームする際の費用相場は10万〜55万円です。便器の交換と内装リフォームであれば、20万〜30万円で行うことができます。最新のタンクレストイレを設置する場合や、団地に多い露出した排水管を隠す場合は、費用がもう少しかかる可能性があります。

団地のリフォームでよくある質問

団地のリフォームを成功させるためには、適切なタイミングや方法の理解が不可欠です。最後に、団地のリフォームの時期や失敗を避けるコツなどのよくある質問にお答えします。

団地のリフォームを行うならいつが良い?

団地のリフォームは、暖かくて比較的気候が安定していることから春(4月~5月)が良いとされます。夏や冬はリフォームで空調機器を使えなくなると、室内の気温が高すぎたり低すぎたりしてしまうため、あまりおすすめしません。また、6月の梅雨の時季になると、湿気によって壁紙がたるみやすくなるため、リフォームは避けたほうが良いでしょう。4月であれば、決算前の1月~3月の繁忙期が終わったタイミングのため職人を確保しやすく、余裕を持ってリフォームの計画を立てられます。

団地に住んだ状態のままリフォームできる?

団地に住みながらのリフォームは可能ですが、工事内容によっては一時的な退去が必要になることがあります。特に水回りのリフォームや大規模な工事の場合は、生活の安全や快適性を考慮して仮住まいを用意したほうが安心です。

団地のリフォームに適した築年数は?

団地のリフォームに適した築年数は一概にいえませんが、建築から数十年経過した団地では、特に水回りや配管・電気設備の老朽化が進んでいるケースが多い傾向にあります。このような団地では、リフォームによって住環境を改善するのがおすすめです。一方で、比較的新しい団地でも、ライフスタイルの変化に合わせたリフォームは有益です。

団地のリフォームで失敗しないコツは?

団地のリフォームで失敗しないためには、リフォームの目的を明確にしたうえで予算を設定することが重要です。リフォームの範囲やスタイルを事前に決めておくことで、不要な工事や費用を削減でき、快適な住まいを実現できます。また、団地のリフォーム実績が豊富な業者に依頼することも大切です。施行事例を確認し、自分の希望するスタイルやレイアウトを得意とする業者を選ぶのが良いでしょう。

団地のリフォーム費用を抑える方法は?

団地のリフォーム費用を抑えるには、住宅ローンやリフォームローン、自治体が用意している補助金などを活用するのが効果的です。工事内容によって利用できる支援制度は変わってくるため、わからない点があればリフォーム会社に相談することをおすすめします。