リフォームの基礎知識と費用の相場

押入れをクローゼットにリフォームするには?

和室のある住まいに設置されていることの多い押入れ。伝統的な収納スペースではあるものの、現代の生活スタイルとは合わなくなってきており、使いにくさを感じている人も多いでしょう。その解決策として実施されているのがクローゼットへのリフォーム(リノベーション)です。この記事では、押入れをクローゼットに変えるメリットや費用相場について詳しく解説します。押入れのクローゼットへのリフォームを検討している場合は参考にしてください。

押入れはクローゼットにリフォームしたほうが良い?

押入れの使い勝手に不満を感じている場合は、クローゼットにリフォームすることで改善できる可能性があります。ここでは、押入れに対するよくある不満や、クローゼットへのリフォームをおすすめする理由を解説します。

押入れに対する主な不満

押入れに対する不満として、使いづらいことから押入れが物置状態になっており、何を収納したか思い出せなくなっているケースはよくあります。押入れの構造上、奥に収納した物を取り出しにくいのもネックです。また、洋室やフローリング中心の生活をしている場合、そもそも押入れのある和室を利用しなくなったという人も多いでしょう。使わない荷物でいっぱいになり、押入れを開くと上段から荷物がなだれ落ちてくるなどの事故も起こりがちです。さらに、経年劣化によって押入れ自体が傷み、使い続けることに不安を感じることもあります。

押入れをクローゼットにリフォームしたほうが良い理由

押入れをクローゼットにリフォームすることで、現代のライフスタイルに合わせた使いやすい収納スペースを実現できます。押入れは和室での生活を想定したデザインで、布団を保管する目的で作られています。そのため、奥行きが80~90cmと深く、収納力が十分でも布団以外の物を収納しにくいのが特徴です。また、押入れは上下に仕切られているため、洋服をかけた状態で収納するのが難しいのも使いづらいポイントです。リフォームによって和室を洋室にするとともに、押入れをクローゼットに変更することで、このような不満を解消できます。

押入れをクローゼットにリフォームする際のポイント

押入れをクローゼットにリフォームする場合は、デザインだけではなく扉や内部の壁紙にも注目する必要があります。ここではリフォーム時のポイントを3つご紹介します。

用途に応じた扉を選ぶようにする

クローゼットの扉は大きく分けて「折れ戸」「引き戸」「開き戸」の3種類があります。それぞれ特徴が異なるため、押入れをクローゼットにリフォームする際は用途に応じて必要な扉を選ぶことが大切です。また、扉の色や素材は部屋のテイストに合う物を選びましょう。扉によってお部屋の印象や雰囲気はガラッと変わりますが、全体のイメージを統一しておけば失敗を防げます。

折れ戸

折れ戸は開けると扉が折りたたまれるタイプで、フルオープンが可能です。クローゼットの中を確認しやすく、間口が広いことから大きな物でも出し入れしやすいメリットがあります。ただし、開閉にはクローゼットの前に扉1枚分のスペースが必要です。変更にかかる費用の目安は、工事費と商品代を含めて20万円ほどとなっています。

引き戸

引き戸は、レールや溝を使って横にスライドして開閉するタイプの扉です。スペースを取らずに開閉が可能なため、インテリアの制限が生まれにくく、狭い空間でも設置しやすいのが魅力です。ただし、扉の枚数が少ないと開口部が狭くなり、大きな荷物を出し入れしにくくなる可能性があるため注意しましょう。クローゼットの扉を引き戸にする場合の費用は、15万〜30万円が相場です。

開き戸

開き戸はドアノブや取手をつかみ、手前に引いて開閉するタイプの扉です。ワンアクションでクローゼットの中を確認しやすく、荷物の出し入れも簡単にできます。注意点としては、扉の前にある程度のスペースがないと開閉できないため、インテリアの配置が制限されやすい点が挙げられます。費用は8万〜15万円が目安です。

「何をどう収納したいか」のプランをリフォーム前に決めておく

押入れをクローゼットにリフォームする場合は、事前に収納するアイテムやその方法を決めておきましょう。衣類や本、雑貨など、アイテムごとに適した収納方法は異なるためです。例えば、衣類のみを収納する場合はハンガーラックを設置するだけで十分ですが、本や小物も収納する場合は、棚板を設置することで収納量を大幅にアップできます。

内部の壁紙は機能やデザインを考慮して選ぶ

クローゼット内部に使用する壁紙は、見た目だけでなく機能性も重視しましょう。特におすすめなのが調湿機能のある壁紙です。押入れには換気扇や窓がないため、クローゼットにリフォームする際に湿気対策をしないとカビが発生しやすくなります。そのほかには、消臭効果のある壁紙や傷がつきにくいタイプの壁紙もあります。機能性とデザイン性を両立した壁紙も登場しているため、クローゼットの中もおしゃれにしたい人でも安心です。

押入れをクローゼットにリフォームする際の費用相場

押入れをクローゼットにリフォームする場合の費用は工事内容によって変わってきます。ここでは一般的なリフォームごとの費用相場をご紹介します。

工事内容費用相場工期の目安
枕棚や中棚をなくす簡易リフォーム2万~3万円半日~1日
扉の交換5万〜12万円1日
本格的なクローゼットへのリフォーム5万〜25万円1〜4日
ウォークインクローゼットへのリフォーム20万〜55万円3〜7日
壁面クローゼットの新設15万〜25万円2〜3日
※費用相場はあくまで参考価格です。実際の費用はリフォーム時に必ず施工店へご確認ください。

枕棚や中棚をなくす簡易リフォーム

コストを抑えつつ押入れの使い勝手をアップさせるには、枕棚や中棚をなくす簡易リフォームという方法があります。枕棚とは、押入れの上部に設ける奥行きの浅い短い棚のことで、かつては枕を収納していました。また、中棚は押入れを上下に仕切る棚で、洋服を吊り下げるハンガーパイプなど高さのある物を収納・設置する際の邪魔になります。枕棚や中棚を撤去することで、一般的な押入れでは収納しにくい高さのある物でも収納しやすくなり、利便性が高まります。

簡易リフォームの工事期間は半日~1日、工事費用は2万~3万円が目安です。押入れのサイズや棚の作りによって費用は変わります。また、棚を外した後にクロス工事が必要な場合、工事期間が追加で1日程度かかり、費用も1万~3万円ほど追加されます。

扉の交換

和室を洋室に変更する場合は、ふすまを洋風の扉に交換するだけでもお部屋の雰囲気との違和感を減らせます。また、横開きのふすまは間口が狭く、収納している物によっては取り出しにくいケースもありますが、折れ戸や開き戸であれば大きな物でも出し入れしやすくなります。扉を交換するリフォームは約5万〜12万円で行うことが可能です。

本格的なクローゼットへのリフォーム

押入れを本格的なクローゼットへリフォームすると、押入れ特有の使いにくさを解消しつつ、収納量をアップさせることが可能です。和室を洋室へリフォームするのに合わせて行う人が多い傾向にあります。クローゼットへのリフォームには、押入れの解体や床の補強、収納棚・ハンガーパイプの設置、扉の交換などの工事が必要となります。費用相場は5万〜25万円程度となっています。

ウォークインクローゼットへのリフォーム

収納スペースをさらに広くしたり、洋服以外のアイテムも収納したりしたい場合は、ウォークインクローゼットへのリフォームを検討しましょう。ウォークインクローゼットへのリフォームでは、通常のクローゼットへのリフォームに加えて照明や窓、換気設備の設置などの工事が必要です。費用は20万〜55万円が相場で、既存のスペースをそのまま使用するのか、もしくは既存スペースを拡張するのかによって変動します。

壁面クローゼットの新設

収納が不足している場合は、壁面にクローゼットを新設する方法もあります。部屋が狭くなるものの、これまでハンガーラックなどにかけていた洋服を収納できるため、お部屋がスッキリとした印象になります。リフォーム費用は15万〜25万円が相場です。

押入れをクローゼットにリフォームする際の注意点

押入れをクローゼットに変更するリフォームでは、多くのメリットがある一方、気をつけるべきポイントもあります。続いてはリフォーム時の注意点を3つ解説します。

床の補強工事が必要になることが多い

押入れをクローゼットにリフォームする場合、多くのケースで床の補強工事が必要になります。押入れは布団や毛布を収納する前提で設計されており、床には下地が組まれていません。一般的にベニヤ板が張られているのみのため、クローゼットとして利用すると、床が重みに耐えられず抜けてしまうおそれがあります。それを防ぐために、クローゼットへのリフォームでは床板を張り替え、下地の補強工事を行います。また、シロアリ被害がある場合は追加工事が必要です。

断熱材を使い、カビ・結露対策を行う

押入れは空気の逃げ場がなく、湿気が溜まりやすいため、クローゼットへリフォームする際はカビや結露の対策が不可欠です。湿気がこもりやすい状態を放置していると、収納しているアイテムが傷みやすくなります。具体的には壁や床に断熱材を入れたり、調湿効果のある壁紙に交換したりする方法が効果的です。

賃貸の場合は大規模なリフォームは難しい

賃貸物件に住んでいる場合は、大家さんから特別な許可を得ている場合を除いて、基本的に押入れをクローゼットへリフォームすることはできません。無断でリフォームを行った場合、退去時に原状復帰を求められ、多額の費用がかかる可能性があるため注意しましょう。

押入れをクローゼットにリフォームする際によくある質問

押入れをリフォームする場合、DIYで行えないか検討している人や、クローゼット以外の用途へのリフォームを検討する人もいるでしょう。ここではそういった疑問にお答えします。

押入れのクローゼットへのリフォームはDIYできる?

押入れのクローゼットへのリフォームは、簡易的なものであればDIYでも可能です。例えば、ふすまを取り外してカーテンレールとロールスクリーンを取り付ける、突っ張り式のハンガーパイプや収納ボックスを設置するなどの作業は自分で行うことができます。DIYに必要な工具などはホームセンターで入手が可能です。ただし、本格的なDIYには時間などの労力だけでなく、技術も必要になるため、慣れていなければリフォーム業者に依頼するほうが安心です。

押入れはクローゼット以外の用途でもリフォームできる?

押入れはクローゼットだけでなく、ほかの用途でもリフォームできます。特に人気なのが、書斎へのリフォームです。作業用のデスクや収納棚を設置し、電気工事で照明やコンセントを取り付ければ、使わなくなった押入れが作業スペースに早変わりします。テレワーク時に仕事をするスペースとしても最適です。高さが合う場合は、中棚を作業用デスクの天板に活用すれば、リフォーム費用を安価に抑えられるでしょう。

押入れとクローゼットの違いは?

押入れとクローゼットの違いは、利用目的と設計にあります。押入れは主に和室に設置され、布団などの和式の寝具を収納するために使われてきました。そのため、クローゼットに比べて奥行きのある設計となっているのが一般的です。一方、クローゼットは洋服や小物など収納するために作られており、洋室に多く見られます。中棚で上下に区切られた押入れとは異なり、奥行きが狭い分、高さのある物でも収納しやすいのが特徴です。

押入れ以外にクローゼットにリフォームしやすい場所は?

押入れ以外でクローゼットにリフォームしやすい場所としては、床の間が挙げられます。床の間は、和室に設けられた掛け軸や花などを飾るスペースのことです。床の補強工事を行ったうえで床板や壁紙を張り替え、ハンガーポールを設置して換気対策を行えば、クローゼットとして有効活用できます。費用の目安は12万〜30万ほどですが、スペースを拡張する場合は金額がアップする可能性があります。